労災隠しとは?
労働安全衛生法により、仕事中に負った傷病等で労働者が4日以上休業した場合または死亡した場合、事業主は労働基準監督署に『労働者死傷病報告』を遅滞なく提出しなければなりません。
そして、4日以下休業についても、四半期ごとに報告が必要です。例えば、4月~6月分を7月に報告します。
報告書を提出しないと50万円以下の罰金が科せられます。
通勤災害については『労働者死傷病報告』を提出する必要はありません。
以上を見ると、労働安全衛生法のことで労災保険とは関係ないように思いますが、報告書を提出しなかったり虚偽の報告をするのは、労働者に労災保険を使わせないためであり、これを労災隠しと言います。
「私生活のケガ・病気には健康保険」「仕事中または通勤中のケガ・病気には労災保険」を適用しなければならず、労災保険を使わせないようにする労災隠しは違法です。
なお、労災隠しは報告書を提出しないことまたは虚偽の報告をすることなので、事業主が労災保険給付の請求書を作成・提出しないことは労災隠しには該当しません。
労災保険給付の請求書の作成・提出については、事業主は労働者を助けるようにと定められており、義務とはなっていないからです。
なぜ、会社は労災隠しするのか?
一部の事業を除き、ほとんどの会社は労災保険に加入しなければなりません。
当然、事業主が労災保険料を払っているのですが、ではなぜ労災隠しするのでしょうか?
それにはいくつかの理由が考えられます。
労災保険に加入していない
適用事業所にもかかわらず労災保険を払っていない会社も存在しています。
労災保険を使うと保険料が高くなる
自動車保険は事故を起こすと保険料が高くなりますが、これと同じように、労災保険を使うと保険料が高くなります。
労災が多いと社会的信用を失う
頻繁に労働災害が発生していることが広まれば、取引先企業や消費者も離れていきます。
報告書の作成・提出が面倒
労働基準監督署へ提出する労働者死傷病報告の作成の知識がなかったり、作成・提出が面倒との理由で提出しない。
細かい理由は他にもありますが、大体以上のことが労災隠しをする理由です。
当然、労災隠ししている会社は労災保険給付の請求書を作成してくれませんが、自分で書いて提出することはできます。
その場合、請求書の事業主証明に署名してくれない旨の書類を添付しましょう。
なお、事業主の意に反して労災保険給付の請求書を提出しても、それを理由に労働者を解雇したり不利に扱うことは労働基準法で禁止されているのでご安心ください。
仕事中のケガ・病気には健康保険は使えないので、労災申請しないと治療を受けられなくなってしまいます。
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