労災保険と第三者行為災害
業務災害、通勤災害が第三者の加害行為によって生じた場合、その第三者から損賠賠償が行われます。
労災保険では、この損害賠償と保険給付を調整することになっていて、重複して損害が補填されません。
行われた順番により、それぞれ次のように調整されます。
労災保険給付が先に行われた場合
同一の事由について、損害賠償を受ける前に労災保険給付を受けたときは、政府は、その価額の限度で、第三者から損害賠償を請求(求償)できます。
第三者からの損害賠償が先に行われた場合
同一の事由について、労災保険給付を受ける前に損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないこと(控除)ができます。
以上のように調整されますが、受けた損害賠償が法定の労災保険給付を上回るときは支給されず、下回るときは差額が支給されます。
そして、年金の場合は、支給すべき年金額が損害賠償額に達するまでの間、災害発生後7年を限度に支給停止されます。
なお、調整されるのは、保険給付と同一の事由に基づく損害賠償のみであり、慰謝料等は含まれません。
示談
示談が真正に成立しており、損害賠償請求権の全部の補填を目的としている場合、政府は保険給付を行いません。
ただし、示談成立前に行われた保険給付に対しては求償を行います。
第三者行為災害の届出
以上に述べたように、労災保険給付と損害賠償は調整されます。
したがって、第三者行為災害に遭い労災保険給付を受ける時は、その災害の内容と第三者の氏名・住所を遅滞なく所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。
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